こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック 院長富永佳代子です。今回のテーマは、歯の構造の第3回目 「セメント質と歯根膜」に関してお話します。
歯根膜とは?
お口を開けても、直接見えない部分、目立たない組織である歯根膜ですが、とても大事な役目を担っています。歯根膜は、歯根と顎の骨をつなぐコラーゲン繊維で、片側は歯根のセメント質に、もう片側は顎の骨(歯槽骨)に入り込んでいます。歯根膜が歯と歯槽骨をつないでいるおかげで、噛んでも歯がぐらぐら動かずにすむのです。歯根膜は、クッション材のような役割、つまり噛んだ力を受け止め、歯や歯槽骨への衝撃を和らげて、噛んだ感触を骨に伝えてます。
入れ歯(義歯)で噛んだ場合、噛んだ力は入れ歯の床の部分から、歯ぐきの粘膜を介して骨に直接伝わるので「痛い」と感じてしまうことがあります。また、歯槽骨への力のかかり具合は、歯から歯根膜を通じて骨に伝わる感じに比較して、鈍くしか感じないため、入れ歯では噛み応えがないと、不満に感じてしまいます。その不満を解消するために、たとえ根っこしか残っていない場合でも、その根っこを抜歯せずに保存して、入れ歯の下で力がかかるように設定し、少しでも噛み応えのある入れ歯(残根上義歯)にすることがあります。
また、インプラントを入れると、噛んだ感じが骨にカツカツ響くと感じる方がおられますが、これはインプラントには歯根膜が無いからです。そのため、強く噛み過ぎて、上部構造が欠けるリスクにもなることもあります。
セメント質
セメント質は、存在が分かりにくく、厚さ週十ミクロン、眼で見ることはまれです。中高年になって、歯茎が下がってくると、セメント質が露出しますがその存在に気づくことはありません。また、象牙質より柔らかく、ブラッシングなどの摩擦で消失してしまいます。
この地味な存在のセメント質ですが、役割は、歯根膜と繋がり歯を歯槽骨に繋げなます。さらに、セメント質にあるセメント芽細胞により、歯根膜を作り出すという重要な役割を担っています。つまり、歯根膜はセメント質なしでは機能できないことになります。
年齢が進むにつれ、他の体の部分と同様、コラーゲン繊維が少なくなり、歯と歯槽骨の間の歯根膜が減ってくるため、歯と歯槽骨が癒着することも多くなり、抜歯に時間がかかったり、難抜歯になることもあります。
歯周病になると
歯周病になると、歯肉に炎症が起こります。目で見てわかる症状は、出血したり歯茎が腫れたり、膿が出ることです。目に見えない部分、歯根周辺では、歯根膜は傷んでしまい、セメント質からはがれてします。そのため歯周ポケットができてしまいます。歯周ポケットが深くなるにつれ、歯周ポケット内に汚れ(プラークや歯石)がさらに蓄積。歯周病はさらに悪化の一途をたどり、歯がぐらぐら動いて噛めなくなり、抜歯の必要、もしくは自然に歯が抜けてしまいます。
初期のうちに歯周病の治療を開始すると、生きているセメント芽細胞や歯根膜細胞によって、歯周組織は回復され、元通り完全復活とはいきませんが、歯槽骨と歯の結びつきが、徐々に戻ります。しかし、その回復には限界があるので、補うための歯周再生療法が、近年注目されつつあります。しかし、歯周組織再生療法は、まだ開発の段階で、費用も時間もかかります。
歯周病は初期の段階で発見することが大事です。ご自分でできることは、歯磨きと定期的な歯科受診での歯石除去や歯磨き改善です。そのため、定期的な歯科受診が重要となります。最低でも一年に一回、半年に一回は歯科受診を行い、歯周病リスクを減らすように心がけましょう。
次回は、このシリーズ最終章 歯肉(歯ぐき)についてお話します。
富永歯科クリニック 院長 富永 佳代子